日本の政治においても、もちろん世界でも財政は国を左右する大きな関心事です。
二項対立で単純化するのは、本質を見誤るとは思っているのですが、今回の話はそんな勘違いをしていた自分への戒めとして、経過を含めて書きたいと思います。

積極財政と緊縮財政
積極財政派の特徴
- 基本姿勢: 自国通貨建て(円建て)の国債を発行しているため日本政府がデフォルト(債務不履行)する可能性はないとし、景気下支えや成長投資を優先する立場です。
- 主張: 単年度のPB黒字化目標に縛られず、減税や給付金、インフラ投資などを通じて積極的に財政支出を行い、名目賃金や経済成長を優先すべきと主張します。
- 近年の動向: 2025年10月に発足した高市政権が「責任ある積極財政」を掲げ、PB黒字化目標の単年度拘束の見直しなどを進めています。
財政規律派の特徴
- 基本姿勢: 国債の累増による財政破綻や、金利急騰・物価高騰を強く警戒する立場です。
- 主張: プライマリーバランス(PB:基礎的財政収支)の黒字化や歳出削減、増税などを通じた財政再建を重視します。
財政規律派が「積極財政」に反対・懸念する理由
先に明らかにしたいのはこの話は積極財政の欠点ではなく、財政規律派が積極財政をどう見ているかという意味です。
- 「財政は無限ではない」という視点 積極財政派は「日本円を刷れるから破綻しない」と主張しますが、財政規律派は**「国の信用や市場の許容量には限界がある」**と考えます。歯止めなく国債を発行し続ければ、いずれ限界を迎えて金利急騰やインフレを招くと警告しています。
- 将来世代へのツケ回し 今、国債を発行して大判振る舞いをすれば、将来その借金を返すために、子どもや孫の世代が増税や社会保障の削減に苦しむことになると懸念しています。
- バラマキによる経済の歪み 市場への過剰な資金供給は、真の経済成長を促すのではなく、非効率な企業を生き残らせたり、悪質な物価高(インフレ)を悪化させたりするだけだと批判しています。
つまり、財政規律派の行動原理は、積極財政派のブレーキ役として「これ以上借金を増やして国を危険にさらすな」と主張することに見えます。
このように並べて眺めてみると面白いことに気づきます。
積極財政派は単独で一つの政策であるのに対して、財政規律派は、積極財政に否定でしか存在しえないということです。
少し決めつけですね、もう少しかみ砕くと、国の成長を考えると、積極財政がスタンダードなのに対して、それを否定する立場として財政規律派が存在しているといえばいいか。
もちろん成長がすべてではないし、国際協調など単独で国の姿勢が決まらない場合もあります。
それでも、成長よりも財政規律を大事にするというスタンスは国として第一に選択するスタンスではないように感じます。
成長の歪み、暴走をコントロールするために財政規律が必要といえばいいか。
まるで一部の野党のように、与党に対して足を引っ張ることでしか、国会審議を行えない哀れさと同じように感じてしまうのは少しうがった見方でしょうか。ああ、これも言い過ぎでした。
世界銀行のレポートで述べられた産業政策
今年2026年の3月に世界銀行から出されたレポートで、新自由主義、緊縮財政から、産業政策、積極財政への転換が提示されました。
世界銀行が発表した『開発のための産業政策(Industrial Policy for Development)』などの報告書は、「新自由主義(ワシントン・コンセンサス)」に基づく小規模な政府・無条件の市場放任・緊縮財政の路線からの大きな歴史的転換を示すものとして国際社会で高く注目されています。
従来の「市場介入を極力排除し、財政削減と民営化を推進する」立場から、「国や地域の持続的成長には国家による適切な産業政策と戦略的な公的支援(積極的な役割)が不可欠である」という認識へと大きく踏み出しました。
緊縮財政から「目的を持った積極的投資」へ
単に予算を削減する「緊縮」ではなく、教育、技術振興、インフラ整備など将来の生産性を高める分野への公的投資(積極財政的アプローチ)の重要性が強調されています。ただし、「無駄なバラマキ」にならないよう、成果目標の設定や期限の明示(サンセット条項)を厳格に求めています。
そしてここが、この記事を書こうと思ったモチーフでした。
高市、片山財政の視点
1. 責任ある積極財政と投資重視
成長分野への投資: AI・半導体などの戦略17分野の予算要求においてシーリング(概算要求基準)を撤廃し、将来の経済成長を促すための積極的な財政出動を行っています。
PB(プライマリーバランス)目標の撤廃: 財政規律に過度に縛られて必要な投資や物価高対策が遅れることを避けるため、プライマリーバランスの単年度黒字化目標を撤廃しています。
2. 「日本版DOGE」による歳出・補助金の効率化
赤字国債への依存抑制と見直し: 単に国債を発行するだけでなく、市場の信認を得るために赤字国債に極力頼らない姿勢を強調しています。
日本版DOGEの推進: 効果の低い補助金や税の優遇措置、基金の削減を徹底的に進め、限られた財源を効率化する方針をとっています。
3. 物価高対策と減税・給付のバランス
消費税・支援金法案の推進: 働く低所得者や中所得者の負担を和らげるため、飲食料品の消費税減税や給付付き税額控除的な支援策を重要法案として位置づけています。
ガソリン補助金などの出口戦略模索: 財政負担の軽減を考慮し、ガソリン価格抑制などの時限的措置については与野党の意見も踏まえつつ段階的な見直しや出口戦略を検討しています。

高市、片山財政こそ理屈である世界銀行レポートの現実への実装なんだろうと。
岸田政権、石破政権が見ていた財政
① 岸田政権「新しい資本主義」との共通点
岸田前首相が掲げた「新しい資本主義」の真意は、「市場に任せきりにする(新自由主義)でもなく、昭和のような巨額公共事業のバラマキ(旧来型国家主導)でもない、第3の道」でした。
- 官民連携による重点投資:半導体(TSMC誘致など)、GX(脱炭素)、DX、人への投資(リスキリング)など、国家として勝ち筋のある領域に集中的に公的資金を投じ、民間の巨額投資を引き出す「呼び水」とする手法。
- これは世界銀行が言う「Public Inputs(公共的インプット)」や「ミクロ的インセンティブ」の考え方そのものです。
② 石破政権「地方創生・防災・戦略産業」との共通点
石破首相も単なる「財政再建原理主義(緊縮派)」ではありません。
- 地方創生や安全保障、防災・減災といった「国家・地域の存続に必要な基盤」には財政を惜しまず投入する姿勢を示しています。
- 財政の「無駄削減」を口にしつつも、地域の農業、技術開発、インフラ再構築など生産性を引き上げるための戦略的投資は積極的に肯定しています
こうしてみた時に、財源に対しては緊縮でしたが、政府による投資という面では積極だったなあと。ここが今まで自分が気付いていない点でした。
財源にこだわり、政策も緊縮と勘違いをしていました。
二元論では見えてこない真実
共通している部分(時代の大きなうねり)
「市場にすべてを任せればうまくいく(新自由主義・緊縮)」という時代は世界的に終わり、「国家が明確なビジョンを持って戦略的投資を行う(産業政策の復活)」という大方針への転換は、岸田・石破・高市どの政権であっても根底に共有されています。
決定的に違う部分(アクセルの踏み方)
ただし、それを「これまでの財政規律の枠内でやりくりしようとした(岸田・石破)」のか、「財政規律の呪縛を解いて、成長のための大規模投資を最優先する(高市流)」のかというアクセルの踏み込み具合や覚悟の度合いには明確な差があります。
それでも残る傷あと
財源という一番大きな違い
結局ここに尽きるのではないか。
例えばよくある議論として、給付であれ減税であれ減ったぶんの補填という意味で財源を言い出します。しかしとりすぎた税金を国民に戻すという文脈で見ると、減った分の補填というのも変な話です。減った分を補填すれば、またとりすぎの状態になるからです。
つまりは減ったら戻さなければならないという大前提(財政の規律)があるので、思考停止で財源がという形になるわけです。
上でも書きましたが、わたしには、石破、岸田両氏の政策は財政規律派と見えていました。
しかしより詳しく見ていくと、財源にこだわるという面では、緊縮派でしたが、必要な財政投資を積極的に行うという点において、財政規律ではなく、積極財政であったと。

破壊ではなくアウフヘーベン
だから、高市、片山財政は
財政投資という点においては、形を変えて今までの路線を発展させていく
財源論としては、増税による収入の補填ではなく、投資を成長の源泉としていくという形づくりがまさに今世界でも求められていく潮流なんだろうと思うのです。
あえて傷跡という言葉を使ったのは、財政規律をどうとらえるかというところにあります。
やはり、財政に規律を求めるというのは、必要な視点でしょう。無分別でいいわけがないのだし。
しかし、規律に重きを置くことで、成長より規制という見え方になってしまったことに多くの人からの反発があったのではないか。
そしてそのことが、成長を阻害し傷をつけたと感じています。
その傷はもちろん二人だけではありません。まさに「日本の失われた30年」こそ、成長より規律という自縄自縛が日本に与えた傷なのでしょう。
成長のためには、財政投資をするというところでは同じものを見ていたのに、財源を表に出しすぎたことで、増税眼鏡とか、財務省のポチとか散々なことを言われてきた。
このことは、結局財務省や、メディアに対しての不信感につながっていくのではないかと感じました。
正しいと感じた簡単な理由
世界銀行のレポートなどちょっと難しい資料もありましたが、結局のところはどこに落ち着くのか。
- 国が投資を行うことで、成長を促す。
- その原資とは、消費税などの生活阻害税ではなく、成長した企業からの所得税など投資に紐づいた収入でまかなう。
- また、あわせて消費税を減税することで、消費の喚起を促し、その成長からの税収でまかなう。
簡単な理屈で、今の財政が正しいのが理解できました。

そして自分が勘違いしていたところ、岸田、石破ラインは見方を変えると、長く続いた自縄自縛を断ち切り、ここにつながるための必要な施策だったのだと。



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